こんにちは!富山の行政書士のSHIOです。
建設業許可の取得を目指す中で、多くの一人親方(個人事業主)さんが「うっ…」と立ち止まってしまう大きな壁。それが、「500万円以上の資金(財産的基礎)」という要件ではないでしょうか。

「500万円なんて大金、今すぐ会社の通帳に入れておかなきゃいけないの?」
「これって、法人の資本金みたいなもの?個人事業主の自分はどうすれば…?」
「一時的に親から借りてきて、証明書を取ったらすぐ返す…っていうのはアリ?」
そんな、お金にまつわるリアルな疑問や不安が、頭の中をぐるぐると駆け巡っているかもしれませんね。
ご安心ください。今日は、この「500万円の壁」の本当の意味と、一人親方(個人事業主)さんがクリアするための具体的な方法を、どこよりも分かりやすく解説していきます。
この記事を読めば、漠然としていたお金の不安が、具体的な行動計画に変わるはずです。
1. なぜ「500万円」が必要なの?~これは国からの意地悪ではありません~
まず、大前提として、なぜ国はこんな要件を設けているのでしょうか。 これは、決して「許可を取りにくくして、一人親方をいじめよう」という意地悪ではありません。
建設工事は、ご存知の通り、材料を仕入れたり、仲間の職人さんに応援を頼んだり、工事が完成してお客様から入金されるまでの間に、たくさんの「立て替え払い」が発生します。もし、事業者の手元に全く資金がなかったら、どうなるでしょう?
材料費が払えずに工事がストップしてしまったり、協力してくれた仲間への支払いが遅れてしまったり…。そうなると、一番困るのは工事を依頼してくれたお客様や、信じてついてきてくれた仲間たちです。
つまり、この「500万円」という要件は、 「事業を安定して続けるための、最低限の”体力”がありますか?」 という、いわば事業の体力測定なのです。 車を走らせるのにガソリンが必要なように、事業を継続していくための最低限の元手(運転資金)があるかどうかを、国がチェックしている、と考えてください。
万が一のトラブルがあっても、すぐに事業が傾いて周りに迷惑をかけないための「備え」の証明でもあるのです。
2. 【個人事業主のための攻略法】500万円をクリアする2つのルート
さて、ここからが本題です。株式会社であれば「資本金」や「自己資本」という決算書上の数字で見ることが多いですが、個人事業主である一人親方さんには、大きく分けて2つの攻略ルートがあります。ご自身の状況に合わせて、どちらかを選んでください。
【ルート①】これまでの蓄積で証明!「自己資本」でクリア
「自己資本」と聞くと、なんだか難しく感じるかもしれませんね。これは簡単に言うと、「あなたが事業を始めてから、元手として用意したお金や、これまで稼いで事業のために貯めてきた利益の合計」のようなものです。事業の純粋な資産額、と考えても良いでしょう。
- どこを見ればわかるの?
- 毎年、青色申告で「貸借対照表(バランスシート)」という書類をきちんと作成している方なら、この方法が使えます。確定申告書の貸借対照表にある「純資産の部」の合計額を見てください。この金額が500万円以上あれば、要件クリアです。
- このルートのメリット・デメリット
- メリット: 今現在、通帳に500万円の現金がなくても、これまでの事業の蓄積(例えば、事業用の車両や工具、売掛金なども含めた純資産)で要件をクリアできる可能性があります。真面目にコツコツ利益を積み上げてきた方にとっては、非常に有効な方法です。
- デメリット: 毎年、きちんと正規の簿記の原則で貸借対照表を作成していることが大前提になります。白色申告の方や、青色申告でも貸借対照表を作っていない方は、残念ながらこの方法は使えません。
【ルート②】シンプルイズベスト!「預金残高」でクリア
おそらく、ほとんどの一人親方(個人事業主)さんにとって、最も分かりやすく、現実的なのがこちらのルートです。手続きも非常にシンプルです。
- 何を用意すればいいの?
- あなたがお使いの金融機関(銀行や信用金庫など)の窓口で発行してもらう、「500万円以上の預金残高証明書」です。
- どうやって取るの?
- 取引のある金融機関の窓口へ行き、「建設業許可の申請で使いたいので、〇月〇日付の預金残高証明書を発行してください」と依頼するだけです。発行には数日から1週間程度かかり、手数料(1,000円前後)が必要です。
- 「預金残高証明書」の重要ポイント!
- 証明日は1日だけでOK! 「ずっと500万円をキープしなきゃいけないの?」という心配は無用です。残高証明書を発行してもらう特定の一日だけ、口座に500万円以上の残高があれば問題ありません。
申請の直前(通常は1ヶ月以内)の日付で取得します。 - 通帳のコピーではダメ! 時々、通帳のコピーで済ませようとする方がいますが、これは認められません。必ず金融機関が発行する正式な「残高証明書」が必要です。
- 複数の口座を合算できる! 「A銀行に300万円、B信用金庫に200万円」という場合でも、それぞれの金融機関で残高証明書を取得すれば、合計500万円として認められます。
- 個人の通帳でもOK! 屋号付きの事業用口座である必要はなく、あなた個人の普通預金口座でも大丈夫です。
- 証明日は1日だけでOK! 「ずっと500万円をキープしなきゃいけないの?」という心配は無用です。残高証明書を発行してもらう特定の一日だけ、口座に500万円以上の残高があれば問題ありません。
3. 財産的基礎「500万円」に関するよくあるギモンと注意点
この要件については、よく誤解されている点や、注意すべき点があるので、Q&A形式で整理しておきましょう。
- Q. 親や知人から一時的に500万円を借りてきて、証明書を取ったあとすぐに返す、いわゆる「見せ金」でも大丈夫?
- A. これは絶対にダメです! 「見せ金」は、審査の過程で発覚することが多く、虚偽の申請にあたります。許可が取れないばかりか、バレた場合には罰則の対象となる可能性もあります。「誠実性」という別の許可要件にも反する行為であり、絶対にやめましょう。
- Q. 融資(ローン)で借りたお金でもいいの?
- A. 融資を受けて、それがあなたの口座にきちんと入金され、返済計画も明確な「自己の資金」となっていれば、問題ありません。ただし、審査で融資の経緯などを確認されることもあるため、不安な場合は専門家にご相談ください。
- Q. 証明書を取ったあと、すぐに500万円を使ってしまってもいいの?
- A. 法律上、許可が下りたあとも500万円を口座に維持し続ける義務はありません。しかし、この要件の趣旨(事業の体力)を考えれば、事業を安定させるために、ある程度の資金を手元に残しておくことが、経営者として賢明な判断と言えるでしょう。
まとめ:資金計画は、未来の自分への大切な投資
「500万円」という数字だけを見ると、とても高く、冷たいハードルに感じるかもしれません。 しかし、この要件は、あなたに無理難題を突きつけているわけではなく、「ご自身の事業の財務状況を一度しっかり見つめ直し、未来への計画を立てる良い機会ですよ」という、国からのメッセージでもあります。
自分の事業には今、どれくらいの体力があるのか。これから大きな仕事に挑戦するために、どれくらいの資金が必要になるのか。この機会に、ご自身の「お金」と真剣に向き合ってみませんか?
「自分の場合は、自己資本でいけるのか、それとも預金残高で証明するのがいいのか…」 もし、どちらがベストな方法か迷ったり、資金繰りについて不安があったりしたら、ぜひ一度、私たち行政書士にご相談ください。あなたの状況を丁寧にお聞きし、最適なクリア方法を一緒に見つけ出すお手伝いをさせていただきます。
この500万円の壁を乗り越えることは、単に許可を取るためだけでなく、あなたの事業をより強く、よりたくましく成長させるための、未来への大切な投資になるはずです。