富山を拠点に行政書士をしております、SHIOと申します。
天候に左右され、工期に追われる毎日の中で、事務所に掲示してある「建設業許可証」の日付、最後に確認したのはいつでしょうか?
「まだ先だと思っていたら、来月で期限切れだった!」
「更新の通知が来たけれど、現場が忙しくて手つかずのままだ……」
「役員の変更を届けていなかった気がするけど、更新できるのだろうか?」
そんな冷や汗をかくようなご相談を、これまで数多くいただいてきました。
建設業許可は、一度取れば終わりではありません。5年ごとの「更新」というハードルを越え続けなければ、苦労して手に入れた許可は失効してしまいます。許可がなくなれば、500万円以上の大きな工事は即座に受注できなくなり、会社の信用もガタ落ちです。
しかし、更新手続きは新規取得の時と同じくらい、あるいはそれ以上に「過去の整合性」を問われる複雑な手続きです。
この記事では、多忙な経営者様に向けて、建設業許可の「更新」と、それに伴う「変更届」の重要ポイントについて、専門用語をできるだけ使わずに徹底解説します。
これを読めば、更新に向けて今何をすべきかが明確になります。ぜひ最後までお付き合いください。
建設業許可更新とは?基本の流れとポイント
まずは、建設業許可の更新制度の基本をおさらいしましょう。「知らなかった」では済まされない絶対的なルールが存在します。
建設業許可の有効期間と更新が必要な理由
建設業許可の有効期間は、許可があった日から「5年間」です。 5年目の許可満了日の前日をもって、有効期間は終了します。
例えば、許可日が「令和2年4月1日」であれば、有効期限は「令和7年3月31日」です。この日までに更新手続きを完了させ、新しい許可証を手にしていなければなりません。
更新が必要な理由は、単なる手数料集めではありません。 建設業は、手抜き工事や経営破綻が起きると、発注者や地域社会に多大な損害を与えます。そのため、「この会社は5年経った今でも、ちゃんと経営能力があり、技術力があり、お金の信用があるか?」を定期的にチェックする必要があるのです。
もし更新を忘れて1日でも過ぎてしまうと、その瞬間から「無許可業者」に戻ります。これまで積み上げてきた実績がリセットされるだけでなく、許可番号も消滅してしまいます。
建設業法7条に基づく更新要件の解説
更新をするためには、建設業法第7条などで定められた「許可の要件」を、現在も満たし続けていることが必要です。
主なチェックポイントは以下の4つです。
- 経営業務の管理責任者(経管)がいるか:経営のトップが常勤しているか。
- 専任技術者(専技)がいるか:資格や経験を持つ技術者が、各営業所に常駐しているか。
- 誠実性があるか:法律違反などをしていないか。
- 財産的基礎があるか:一般建設業の場合、直前の決算で自己資本が500万円以上あるか、もしくは資金調達能力があるか。(※更新時は、過去の経営実績も考慮されるため、新規時ほど厳しく預金残高を問われないケースもありますが、債務超過の状態などは要注意です)
特に注意が必要なのが「人の要件」です。 「専任技術者だった社員が3年前に退職したが、後任を届け出ていなかった」という場合、その時点で要件欠落となり、更新どころか許可の取消し事案になる可能性もあります。
令和7年・制度改正時代の最新動向
近年、建設業法は頻繁に改正されています。令和時代に入ってからの大きな流れとして、以下の2点は絶対に押さえておきましょう。
- 社会保険加入の厳格化: 以前は「未加入でも指導で済む」こともありましたが、現在は適切な社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)への加入が、事実上の許可・更新の必須要件となっています。未加入の場合、更新が認められないケースが増えています。
- 手続きの電子化: 国土交通省は手続きのデジタル化を推進しており、建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)の運用が始まっています。富山県でも電子申請への対応が進んでいます。これからの時代、紙での申請よりも電子申請がスタンダードになっていくでしょう。
建設業許可更新手続きの全体像
「じゃあ、いつから準備すればいいの?」という疑問にお答えします。
更新申請のタイミングと期間管理
更新申請の提出期限は、原則として有効期間満了日の30日前までです。
- 理想のスタート:満了日の4〜5ヶ月前。 (必要書類の確認や、変更届の漏れがないかチェックする時間が必要です)
- 申請のリミット:満了日の30日前。 (これを過ぎても満了日当日までなら受け付けてもらえることが多いですが、審査中に満了日が来てしまうリスクがあります。万が一書類に不備があって突き返されたら、その時点でアウトになる可能性もゼロではありません)
富山県の土木センター窓口は混み合うこともあります。ギリギリの申請は精神衛生上よくありませんので、余裕を持ったスケジュールが必要です。
申請に必要な提出書類・様式一覧
更新申請に必要な書類は、新規申請とほぼ同じボリュームがあります。
- 建設業許可申請書:基本情報など。
- 役員等の一覧表:現在の役員の状況。
- 営業所一覧表(更新):従たる営業所がない場合も作成。
- 収入印紙、はり付け用紙
- 営業所技術者等一覧表:資格証の写しなども添付(自治体によります)。
- 誓約書:押印は必要なくなりました。
- 建設業法施工令第3条に規定する使用人の一覧表:支配人を置く場合、従たる事務所がある場合に作成。
- 定款:法人のみ(変更がない場合は、前回申請時のコピーで可|自治体によります)。
- 営業の沿革:創業以後の沿革、許可の状況。
- 所属建設業者団体:該当なしの場合も作成。
- 健康保険等の加入状況:全ての従業員数(建設業以外に従事する者を含む)を記載。
- 主要取引金融機関名:(変更がない場合は、前回申請時のコピーで可|自治体によります)。
- 営業所付近の案内図:営業所付近の地図。
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者)証明書
- 常勤役員等の略歴書:建設業の経営経験を具体的に記載(職名、肩書、所属部署名など)。
- 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書:事業主、「役員等の一覧表」に記載した者。
- 建設業法施工令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書:「建設業法施工令第3条に規定する使用人の一覧表」に記載した者。
- 株主(出資者)調書:法人のみ。
- 登記事項証明書:法人、支配人を置く場合(発行後3か月以内のもの)。
- 事業主及び役員等名簿:事業主、「役員等の一覧表」、「建設業法施工令第3条に規定する使用人の一覧表」に記載した者。
- 登記されていないことの証明書:役員・事業主・令第3条に規定する使用人(発行後3か月以内のもの)。
- 身分証明書:役員・事業主・令第3条に規定する使用人(発行後3か月以内のもの)。
- 営業所の写真:営業所の外観、入口付近及び内部、標識の掲示状況。
- 常勤役員、営業所技術者等の健康保険証の写し:表・裏両面。
- 健康保険等の加入状況の確認書類の写し。申請時直前の「納入告知書 納付書・領収証書」など。
「前回出したからいいだろう」は通用しません(自治体によります)。今の状況を証明する書類を一通り揃える必要があります。
許可申請から交付までの具体的な流れ
- 事前準備:役所での公的書類取得(納税証明書、身分証明書、登記されていないことの証明書など)。
- 書類作成:申請書や添付書類の作成。
- 提出・受付:富山県内の管轄土木センターへ提出。手数料(県証紙)を納付。
- 審査:県庁での審査期間(標準処理期間は約30日程度)。
- 許可通知書の交付:新しい許可通知書が郵送、または窓口で交付されます。
この審査期間中も、有効期間内であれば営業を続けて問題ありません。もし審査中に有効期間満了日が来ても、処分(許可・不許可)が出るまでは従前の許可が有効とみなされます。
最新の電子申請・郵送手続きの方法
現在、窓口へ持参する以外の方法も整備されています。
- 郵送申請:コロナ禍以降、郵送での受付も一般的になりました(直接持参が必要なものもあります)。ただし、書類不備があった場合の訂正に時間がかかるため、完璧な書類を作る自信がある場合におすすめします。
- 電子申請(JCIP):自宅や事務所のパソコンから申請できます。GビズID(gBizIDプライム)の取得が事前に必要です。移動時間や待ち時間がなくなる大きなメリットがありますが、スキャナーでの取り込みやシステム操作に慣れが必要です。
建設業許可更新の実務:自分でやる場合の注意点
コスト削減のために「自分でやりたい」と考える方もいらっしゃるでしょう。もちろん不可能ではありませんが、そこには大きな落とし穴があります。
自分で申請する場合の準備事項とコツ
ご自身で申請する場合、まず「手引き」の熟読から始まります。富山県のホームページから最新の「建設業許可申請の手引き」をダウンロードしてください。数百ページありますが、これがルールブックです。
コツは、「公的証明書を先に集めないこと」です。公的証明書には「発行から3ヶ月以内」という有効期限があります。書類作成に手間取っている間に期限が切れて、取り直しになるケースが多発しています。まずは申請書の下書きを完成させ、見通しが立ってから役所回りをするのが鉄則です。
失敗しやすいポイントと期限切れリスク
最も多い失敗は、「決算変更届(事業年度終了届)」の未提出です。
建設業許可業者は、毎年の決算終了後4ヶ月以内に、「今期はこんな工事をして、財務状況はこうでした」という報告(決算変更届)を提出する義務があります。 5年ごとの更新時には、過去5年分(5回分)の決算変更届がすべて提出されていることが大前提となります。
「あ、5年間一度も出していなかった!」 という場合、更新申請を受け付けてもらえません。更新申請の前に、慌てて5年分の決算変更届を作成し、まとめて提出する必要があります。これには膨大な作業量がかかり、更新期限に間に合わなくなる最大のリスクとなります。
申請書類・添付資料の作成とチェックリスト
書類作成では「整合性」が命です。 例えば、「登記簿上の役員名」と「申請書の役員名」の漢字が1文字でも違えば(高と髙など)、訂正を求められます。 また、工事経歴書の金額と、財務諸表の売上高が合致していないといったミスも頻出します。
独自のチェックリストを作成し、数字や日付のズレがないか、指差し確認をするくらいの慎重さが求められます。
更新手続きの一本化・新様式対応
許可を複数持っている場合(例:知事許可の一般と特定など)、有効期限がズレていることがあります。更新のタイミングで、これらの一本化(許可の有効期間の調整)を行うことで、次回の更新時期を揃えることができます。これを逃すと、またバラバラに更新手続きをすることになり、手間が2倍になります。
また、様式は頻繁に変更されます。「5年前のデータを上書きして使おう」とすると、様式が古くて受理されないことがあります。必ず最新の様式をダウンロードして使いましょう。
費用・手数料はいくらかかる?建設業許可更新に必要な金額
更新にかかるコストについて、明確にしておきましょう。
手数料・費用の内訳と支払い方法
許可更新の手数料(法定費用)は、許可の区分ごとに以下の通りです。
- 一般建設業許可の更新:50,000円
- 特定建設業許可の更新:50,000円 (※一般と特定の両方を更新する場合は10万円になります)
支払い方法は、富山県の場合、「富山県収入証紙」を購入して申請書に貼り付けていましたが、富山県収入証紙は令和7年9月末に販売が終了することとなりました。
今後は、手数料収納窓口にて手数料を納付します。(現金、クレジットカード、各種コード決済、電子マネーが利用できます)
この際発行される貼付用のレシートを手数料等納付証明書貼付用紙に添付し、副本用のものをコピーのうえ、管轄の土木センターに提出します。
※ 詳細については、出納課からのお知らせをご確認ください。
<参考> 令和7年9月末で富山県収入証紙を廃止(販売終了)します(出納局出納課)
この他に、公的証明書(納税証明書や登記簿謄本など)の取得実費として、数千円程度がかかります。
自分で申請する場合と専門家(行政書士)依頼との比較
- 費用:証紙代50,000円 + 実費数千円。
- 時間コスト:手引きの読解、書類作成、役所回り、窓口での修正対応など、慣れていないと丸3日〜1週間分ほどの時間が潰れます。社長の日当を考えると、実は安くないかもしれません。
- 費用:証紙代50,000円 + 実費 + 報酬額(相場:5万〜10万円程度)。
- メリット:あなたの作業時間はほぼゼロ。ヒアリング(または確認・書類提出)のみ。
役員や営業所・業種の変更と更新の関係
更新申請の審査でストップがかかる原因の多くは、この「変更届漏れ」です。
変更届のタイミングと届出書類
建設業許可業者は、登録内容に変更があった場合、「変更後14日以内(または30日以内)」に届け出なければなりません。
- 商号、所在地、代表者、役員の変更:30日以内
- 営業所の新設・廃止:30日以内
- 専任技術者の変更:14日以内
- 経営業務管理責任者の変更:14日以内
- 資本金の変更:30日以内
これらを「更新のついでにやればいいや」と放置するのは非常に危険です。本来は都度届け出るべきものであり、更新時にまとめて出すと、担当官から厳しく指導されたり、始末書の提出を求められたりすることがあります。最悪の場合、虚偽申請や届出義務違反として罰則の対象になります。
新設・追加・承継などケース別の注意点
- 業種追加(例:土木に加えて舗装も取りたい): 更新と同時に「業種追加」を行うことも可能です。ただし、専任技術者の要件証明などが必要になるため、準備はさらに複雑になります。
- 事業承継(代替わり): 代表者が変わるだけでなく、個人事業主から法人成りする場合や、親から子へ事業を譲渡する場合などは、単なる「変更」ではなく「認可」の手続きが必要になることがあります(令和2年の改正で新設された手続き)。これは更新とは全く別の重たい手続きですので、早めの相談が不可欠です。
社会保険・専任技術者など管理要件の確認
特に「専任技術者の交代」は要注意です。 前任者が辞めた後、後任者が要件を満たしていない(実務経験が足りないなど)ことが発覚すると、その業種の許可は維持できません。 更新のタイミングで、「実は資格者がいなくなっていました」と申告すると、その場で許可の一部廃業を迫られることになります。人材の確保と管理は、経営の生命線です。
建設業許可更新の失効・廃止・廃業時の対応
最後に、万が一の場合について触れておきます。
期限切れ・失効時の影響と再取得の方法
更新期限を1日でも過ぎた場合、許可は失効します。 「うっかりしていました」という言い訳は一切通用しません。救済措置はないのです。
失効した場合、建設業許可業者としての看板を下ろさなければならず、500万円以上の工事請負契約は解除せざるを得ません。 再度許可が必要な場合は、「新規申請」として一から取り直しになります。 新規申請の手数料は90,000円と高くなり、審査期間中は無許可状態となるため、事業へのダメージは計り知れません。
廃業・廃止の場合に必要な届出手続き
後継者不足などで建設業をやめる場合、または一部の業種をやめる場合は、「廃業届」を提出します。これを怠ると、許可の名義が残ったままになり、役所からの通知が来続けることになりますし、将来的に再開したくなった時に履歴が汚れていると不利になることがあります。立つ鳥跡を濁さず、きれいに手続きを終えることも重要です。
承継・合併・相続時の注意ポイント
以前は、個人事業主が亡くなった場合や、会社が合併した場合、許可は引き継げず、新規取り直しが必要でした。 しかし現在は、事前の認可を受けることで、許可番号ごとスムーズに引き継げる制度(事業承継制度)ができています。 ただし、これには「事前の(または死亡後すぐの)」手続きが絶対条件です。タイミングを逃すと承継できませんので、M&Aや相続の話が出たら、即座に行政書士にご相談ください。
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まとめ:建設業許可更新で絶対に押さえるべきポイント
ここまで、建設業許可の更新と変更について解説してきました。 ポイントをまとめます。
- 有効期限(5年)は絶対。 1日でも過ぎたら失効する。
- 毎年の「決算変更届」 が5年分出ていないと更新できない。
- 役員や技術者の変更 は、その都度届け出ている必要がある。
- 自分で行うリスク は、時間の浪費と、書類不備による期限切れ。
現場で汗を流す皆様にとって、分厚い手引きを読み込み、平日の昼間に役所へ行く時間は「コスト」以外の何物でもありません。 慣れない書類作成でミスをして、何度も窓口に通う手間を考えれば、行政書士に任せることは、「時間を買い、本業で稼ぐ」ための賢い投資と言えます。
行政書士は、単に書類を作るだけではありません。
「社長、来年は更新ですよ」 「役員が変わりましたね、変更届を出しておきましょう」 「そろそろ業種追加を検討しませんか?」
このように、あなたの会社の法務部として、許可を維持・管理し、事業の発展をサポートするのが行政書士の役割です。
面倒な手続きは当事務所お任せいただき、皆様は安心して現場での仕事、そして経営に専念してください。
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