富山県内で建設業を営み、会社の成長と安定のために日々尽力されている経営者の皆様、こんにちは。富山県で建設業許可の申請サポートを専門に行っている行政書士の子浦です。
「会社の事業を、もっと次のステージへ進めたい」 「民間工事だけでなく、安定した公共工事も受注できるようになりたい」
情熱をもって事業に取り組む中で、このような目標を掲げられている方も多いのではないでしょうか。
そして、その過程で必ず耳にするのが「経営事項審査(経審)」という言葉です。
名前は聞いたことがあっても、
「一体どんな審査で、何のために必要なの?」「うちの会社も受けるべき?」「申請がとても難しいと聞いたけど、本当だろうか…」
など、多くの疑問や不安をお持ちかもしれません。
この記事では、そんな皆様の疑問を解消するため、経営事項審査(経審)の基本的な知識から、富山県での手続き、そして会社の評価を少しでも高めるための秘訣まで、専門家の視点からできる限り分かりやすく解説していきます。
そもそも「経営事項審査(経審)」って何?会社の通信簿です
まず、この複雑そうな名前の審査を、一言でシンプルに表現してみましょう。 経営事項審査(経審)とは、「建設業者さんのための、全国統一基準の健康診断であり、通信簿」です。
会社がどれくらいの工事を完成させてきたか(実績)、財務状況は健全か(会社の体力)、どんな資格を持つ技術者がいるか(技術力)、そして社会保険に加入しているか(社会への貢献度)といった様々な側面から、企業の総合力を客観的に審査し、点数化します。
では、なぜこのような「通信簿」が必要なのでしょうか。 その最大の目的は、公共工事の入札における公平性と客観性を担保するためです。
国や富山県、富山市、高岡市といった公共団体が道路や橋、学校などを建設する際、どの業者に任せるかを決める必要があります。その選定プロセスが不透明であってはなりません。そこで、経営事項審査という仕組みを通じて、各社の実力を「総合評定値(P点)」という共通のモノサシで測り、客観的なデータに基づいて入札参加業者を選定するのです。
この経審を受けなければ、公共工事の入札に参加するというスタートラインに立つことすらできない、非常に重要な手続きなのです。
【あなたはどっち?】経審を受けるべき会社、受けなくてもよい会社
「なるほど、公共工事に必要なのは分かった。でも、うちの会社は受けるべきだろうか?」 ここでは、皆様の会社が経審を受けるべきかどうか、判断するための目安をお伝えします。
【必須】経審を受けるべき会社
- 国、富山県、県内の各市町村などが発注元となる公共工事の入札に参加したいと考えている会社。
- 元請として、公共工事を直接受注し、会社の格を上げたいと考えている会社。
これらに当てはまる場合、経審の受審は必須となります。
【任意】今のところ受けなくてもよい会社
- 受注している工事が100%民間の工事(個人宅や民間企業からの発注)である会社。
- 公共工事に関わる場合でも、元請業者からの下請としてのみ参加する会社。
これらの会社は、法律上、経審を受ける義務はありません。
【プラスαのメリット】公共工事以外にも広がる効果
ただし、経審は公共工事のためだけ、と考えるのは少しもったいないかもしれません。 経審を受けることで、会社の経営状態や技術力が客観的な「評点」として証明されます。この「公的なお墨付き」は、以下のような場面で思わぬ効果を発揮することがあります。
- 金融機関からの融資審査で有利に働く
- 民間工事の取引先に対する信用力が向上する
- 自社の経営状況を客観的に見つめ直す良い機会になる
事業の健全性を示す一つの指標として、戦略的に経審を活用する企業も増えています。
会社の「通信簿」は何で評価される?総合評定値(P点)の仕組み
経審の最終的な点数である「総合評定値(P点)」は、一体どのような項目で決まるのでしょうか。ここでは専門用語を極力使わず、評価のポイントをご紹介します。会社の日々の努力が、どのように点数に変わっていくのかイメージしてみてください。
- 完成工事高(X1)
工事の実績と規模 直近の決算で、どれだけの額の工事を完成させたかという指標です。シンプルに、会社の事業規模や実績が評価されます。 - 自己資本額・収益性(X2)
会社の財務的な体力 自己資本はどれくらいあるか、利益は出ているかなど、会社の財務の健全性が見られます。いわば「会社の足腰の強さ」を示す項目です。 - 技術力(Z)
技術者の層の厚さ 1級・2級の施工管理技士や技能士など、国家資格を持つ技術者が何人在籍しているかが評価されます。技術者の数と資格の種類が点数を左右します。 - その他の社会性等(W)
社会への貢献度 労働福祉の状況(社会保険・雇用保険への加入)、法令遵守の状況、建設機械の保有状況、防災協定の締結など、企業の社会的責任に関する項目が評価されます。
これらの項目を総合的に評価し、最終的な「P点」が算出されます。つまり、単に売上が大きいだけでは高得点は狙えないのが、経審の奥深いところなのです。
経審の申請手続きは?大まかな流れと注意点
「評価の仕組みは分かったけど、申請が大変そう…」 その通り、経審の申請は複数のステップを踏む必要があり、時間と手間がかかるのが実情です。経審を受ける際の、一般的な流れを見ていきましょう。
【大前提】すべての始まりは「決算変更届」から
経審は、会社の決算日を「審査基準日」として行われます。そのため、経審を受ける大前提として、その事業年度の「決算変更届」を提出している必要があります。この決算変更届は、建設業許可を持つすべての事業者に、事業年度終了後4か月以内の提出が義務付けられているものです。経審をお考えなら、まずこの手続きを忘れないことが重要です。
まず、国土交通大臣の登録を受けた民間の「分析機関」に、決算書などの財務データ(財務諸表)を送付します。ここで、先ほどの評価項目のうち「会社の儲ける力」が分析され、「経営状況分析結果通知書」という書類が発行されます。
次に、STEP1で受け取った「経営状況分析結果通知書」と、工事経歴書、技術職員名簿、各種保険の加入証明など、非常に多くの確認書類を準備して、管轄の土木センター等を経由し、富山県庁へ「経営規模等評価申請」を行います。
STEP2の申請と同時に「総合評定値」を請求することで、後日、最終的な成績表である「総合評定値通知書」が富山県から届きます。この通知書が、晴れて公共工事の入札に参加するための「入場券」となります。
【最重要注意点】有効期間は「1年7か月」です!
この経審の結果には有効期間があります。それは「審査基準日(決算日)から1年7か月」です。 これは、つまり「毎年、公共工事の入札に参加し続けたいのであれば、毎年決算が終わるたびに経審を受け続けなければならない」ということを意味します。この継続的な手続きが、多忙な経営者の皆様にとって大きな負担となっているのが現実です。
専門家がこっそり教える!会社の評点をアップさせる3つの秘訣
せっかく時間と費用をかけて経審を受けるのですから、少しでも良い点数、高い評価を受けたいと思うのが人情です。ここでは、私たち専門家が普段からアドバイスしている評点アップの秘訣を3つご紹介します。
- 秘訣①
技術職員は会社の財産!資格取得を全力で応援する(Z点アップ) 技術者の評価は「人数」と「資格のレベル」で決まります。社員の資格取得を会社としてバックアップする(講習費用の補助など)ことは、社員のモチベーションアップだけでなく、会社の評点アップに直結する最も効果的な投資の一つです。 - 秘訣②
「当たり前」を徹底する。社会保険への加入(W点アップ) 今や、雇用保険・健康保険・厚生年金保険への加入は、建設業界全体の課題であり、経審においても非常に重視されています。未加入の場合、大幅な減点となり、他の項目でどれだけ頑張っても評価が伸び悩みます。従業員を大切にする姿勢が、会社の評価を高めます。 - 秘訣③
日々の経営努力が点数になる。健全な財務体質を目指す(X2点・Y点アップ) 無理な借入を避ける、売掛金を確実に回収する、しっかりと利益を確保するなど、日々の堅実な経営努力が、そのまま財務指標の評価に反映されます。決算の数字を意識した経営を心がけることが重要です。
まとめ:経審は未来への投資。面倒な手続きは専門家にお任せください
今回は、公共工事の受注に不可欠な経営事項審査(経審)について解説しました。
- 経審は、公共工事入札参加のための「会社の通信簿」であり、必須の手続き。
- 会社の「実績・財務・技術力・社会性」が総合的に評価される。
- 申請には多くの書類と複雑なステップが必要で、毎年継続しなければならない。
- 評点アップには、技術者育成や社会保険加入など、計画的な取り組みが有効。
仕組みや重要性は理解できても、「やはり本業の合間に、これだけ複雑な書類を正確に準備するのは難しい…」と感じられたのではないでしょうか。
社長の最も大切な仕事は、書類と向き合うことではなく、現場を見て、お客様と向き合い、会社の未来を描くことです。その貴重な時間を、煩雑な手続きに奪われてしまうのは、会社にとって大きな損失です。
そんな時こそ、私たち専門家にお任せください。建設業の手続きを熟知した専門家に依頼することで、皆様は3つの大きな価値を手にすることができます。
経審は、単なる事務手続きではありません。会社の未来を切り拓くための、前向きな「投資」です。
富山県での建設業許可の更新手続きでお困りの方は、ぜひ当事務所へお気軽にご相談ください!
あわせて読みたい関連記事
