富山県内で建設業を営む経営者の皆様、そして日々現場や社内の業務に奔走されているご担当者の皆様、毎日本当にお疲れ様です。
現場の管理、お客様との打ち合わせ、資金繰り、そして従業員の育成…
息つく暇もないほど多忙な毎日を送られていることと存じます。
そんな目まぐるしい日々の中で、「そういえば、役員が一人増えたな」「事務所を隣のビルに移転したけど、何か手続きは必要だったかな?」といった会社の変化に関する手続きを、つい後回しにしてしまってはいませんか?
実は、その「つい後回し」「うっかり忘れ」が、会社にとって生命線ともいえる建設業許可の維持を脅かす、非常に大きなリスクになる可能性があるのです。
この記事では、どのような時に変更届が必要で、いつまでに手続きをすべきか、そして万が一手続きを怠ってしまった場合にどのような事態を招くのかを、富山県の建設業許可申請を専門とする行政書士が、できる限り分かりやすく解説いたします。
そもそも、なぜ「変更届」が必要不可欠なのか?
「ただでさえ忙しいのに、なぜそんな細かい手続きが必要なんだ?」 そう思われるのも無理はありません。しかし、変更届には建設業を営む上で非常に重要な意味があります。
建設業許可は、許可を受けた時点での会社の体制(財産状況、経営経験、技術力など)を審査し、「この会社なら安心して工事を任せられる」とお墨付きを与えたものです。
いわば、許可の「鮮度」と「信頼性」を保つための手続きが変更届なのです。
もし、役員や技術者、事務所の所在地といった重要な情報が古いままでは、許可行政庁である富山県は、その会社の正しい現状を把握できません。それは、発注者や県民からの信頼を損なうことにも繋がりかねません。
変更届は、法律(建設業法)で定められた義務であると同時に、自社の信頼性を公に示すための大切な手続きであるとご理解いただければと思います。
【事例別】「あっ、うちもだ!」これが出たら変更届のサインです
では、具体的にどのような変更があった場合に届出が必要になるのでしょうか。ここでは、特によくあるケースを提出期限ごとにご紹介します。ご自身の会社に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
変更があってから【30日以内】に届出が必要なもの
会社の根幹や許可の要(かなめ)に関わる重要な変更です。スピーディーな対応が求められます。
会社の基本情報に関する変更
- 商号または名称の変更
- 営業所の所在地の変更(主たる営業所・従たる営業所ともに)
- 資本金の額の変更
- 法人の役員に関する変更(新任、退任、辞任、氏名・住所の変更など)
- 個人の事業主の氏名、支配人の氏名・住所の変更
許可の根幹をなす「人」に関する変更
- 経営業務の管理責任者(経管)の交代や変更、氏名の変更
- 専任技術者(専技)の交代や変更、氏名の変更
- 営業所の新設、廃止、業種の追加
- 国家資格者・監理技術者の追加や変更
これらの変更は、会社の体制が大きく変わったことを意味します。変更の事実が発生した日から、わずか30日が提出期限です。
【要注意】変更があってから【2週間以内】に届出が必要なもの
特に緊急性が高いのがこのケースです。
- 経営業務の管理責任者(経管)が基準を満たさなくなった場合
- 専任技術者(専技)が基準を満たさなくなった場合
- 許可の欠格要件に該当してしまった場合(役員の破産など)
許可の根幹を支える「経管」や「専技」が不在の状態になることは、許可の維持に関わる一大事です。この場合は、2週間以内という非常に短い期間での届出が義務付けられています。
最も忘れがち?年に一度の「決算変更届(事業年度終了報告)」
上記の変更届とは別に、全ての建設業許可業者が提出しなければならないのが「決算変更届」です。
これは、事業年度が終了するごとに、その1年間の工事経歴や財務状況を報告するもので、事業年度終了後4か月以内の提出が義務付けられています。
「今期は公共工事もやっていないし、特に大きな変更もなかったから提出しなくていいだろう」 これは、非常によくある誤解です。
決算変更届は、毎年必ず提出しなければなりません。たとえ1年間工事実績がゼロだったとしても、提出義務はあります。
特に、公共工事の入札に参加するために経営事項審査(経審)を受ける事業者様にとって、この「決算変更届」の提出は絶対条件です。提出していなければ、経審を受けることすらできません。会社のステップアップのためにも、決して忘れてはならない手続きです。
「知らなかった」では済まされない。変更届を怠る3つの重大リスク
もし、これらの変更届を提出しなかった場合、どうなるのでしょうか。「バレなければ大丈夫」ということは決してありません。後になって必ず発覚し、厳しいペナルティが待っています。
リスク1:【最大の悲劇】5年後の許可更新ができない
建設業許可は5年ごとに更新が必要です。この更新申請の際に、過去5年分の決算変更届や各種変更届が正しく提出されているかが厳しくチェックされます。
もし、提出漏れがあれば、更新(5年ごと)の申請そのものが受理されません。
更新ができなければ、許可は期間満了とともに失効します。これは、事実上の無許可と同じ状態です。ある日突然、500万円以上の工事を請け負えなくなり、事業の継続が困難になるという最悪の事態を招きかねません。
リスク2:罰則(過料・懲役)の対象になる
建設業法には、届出義務違反に対して明確な罰則規定があります。虚偽の申請や届出を怠った場合、「100万円以下の罰金」や「6か月以下の懲役」が科される可能性があります。知らなかったでは済まされない、れっきとした法令違反なのです。
リスク3:行政からの指導監督や指名停止の可能性
富山県からの指導監督処分の対象となったり、公共工事の指名停止措置を受けたりする可能性もあります。これは、会社の信用に直接的なダメージを与えることになり、金融機関からの融資や取引先との関係にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
多忙な経営者様へ。本業に専念するための最善の選択
ここまでお読みいただき、「うちの会社、もしかしたら届出が漏れているかもしれない…」と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。今からでも決して遅くはありません。
とはいえ、日々の業務に追われる中で、
「どの書類を、いつまでに、どこへ提出すればいいのか…」 「慣れない行政の書式と格闘し、必要な添付書類を集めるのは大変だ…」 「平日の昼間に、時間を割いて県庁へ行くのは難しい…」
と感じるのは当然のことです。
社長の仕事は、書類作成ではありません。会社の舵を取り、未来を創ることです。
そんな時こそ、私たち専門家である行政書士をご活用ください。特に、地元である行政書士子浦昇事務所であれば、富山県の窓口の運用にも精通しており、スムーズな手続きが可能です。
専門家に任せることには、3つの大きなメリットがあります。
まとめ:大切な許可を守り、事業を未来へ繋ぐために
今回は、建設業許可の各種変更届の重要性について解説しました。
- 変更届は会社の信頼性を保つための重要な義務
- 役員交代や事務所移転など、多くのケースで届出が必要
- 年に一度の「決算変更届」は全事業者が対象
- 手続きを怠ると、許可の更新ができず、事業継続の危機に陥る
大切な建設業許可は、皆様がこれまで築き上げてきた努力と信用の証です。その価値を、手続きの失念という「うっかり」で失ってしまうことほど、もったいないことはありません。
建設業許可の更新手続きでお困りの方は、ぜひ当事務所へお気軽にご相談ください。
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